花咲く雪に君思ふ
誠太郎達と別れた後、雪花はバラバラになった人形の破片を集めて寺へと持っていった。

そして戻ってきた雪花は、お茶を淹れて僕の前に置く。

「あのお人形さんは、光希ちゃんの体を欲しがっていたのかな?」

「あの女のというより、生きてる人間の体なら誰でも良かったんじゃない?」

妖魔の中には、人間に姿を変えて、妙なモノを売り付ける奴等がいる。

怨念の籠った道具を売って、必ずと言って良いほど「お前は特別だ」等という。

そういう言葉に有頂天になる人間は、奴等のかっこうの餌食だ。

なんせ、奴等の最大の楽しみと言えば、人間がいがみ合ったり、苦しんだりもがいたりする姿を見ることなんだからね。

悪趣味だね。

あの人形は、色んな子供の念が込められていた。だから、体を欲しがった。

自由に動ける体を。

なんせ、あの中に閉じ込められてしまえば、自由に歩くことも喋ることも出来ない。

けれども、乗り移った相手は、霊の念に当てられてすぐに生気を奪われるから、体は朽ちる。

その度に妖魔はまた人形を回収して、次の持ち主を探す。

あの人形も、そんなことを繰り返してああなったんだろうね。

最後に出てきた大きな黒い雲を思い出すと、溜め息を吐きたくなった。

ある意味手遅れになる前に何とか出来て良かったかもね。

……それを考えると、誠太郎に会えたことは運が良かったと思うべきか?

……何か納得いかない。

「あのお人形さんに憑いていた子達も、元々は同じ人間だったんだよね。……そう思うと、少し悲しいな」

「ものの怪っていうのは、ほとんど生きた人間から生まれるんだよ。特に物に宿るものの怪は、その人間の一部だからね」

だが、自分から生まれたモノだなんて、信じる人間はほとんどいないだろう。

誰だって、自分が正しい。正義でいたいって思ってるんだからね。

ただ、ちょっとは理解してほしいよ。

人間が決める正解なんて、あってないようなものだってね。

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