花咲く雪に君思ふ
「もう少し気を付けなよ」
やれやれ、間一髪だったね。
「……あれ……?さっきのお店のお姉さん?」
「……僕は男だよ。あんたとおなじね」
「!」
子供はハッとした顔をしてから、俯いて肩を震わせる。
「……僕は桃矢だよ。……あんた、名前は?」
「き、菊千代」
「僕が聞いてるのは、あんたの『本当の』名前だよ」
僕の言葉に、顔を強張らせ、子供は視線を右へと反らす。
「…………菊之助(きくのすけ)」
「ふーん。……なるほどね」
菊之助の名前を知った僕は、すぐに霊視で菊之助の過去を見た。
「あんたは何でそんな格好してんの?」
菊之助の女装の理由は分かったが、僕はあえて聞くことにした。
「……母様が、それを望むから」
「……」
「僕には、妹がいたんだ」
無言で先を促すと、菊之助はぽつりぽつりと呟くように話始める。
「菊千代って言うのは、僕の妹の名前で、女の子が欲しかった母様は、菊千代をとても可愛がってた……勿論、僕にも優しくしてくれたよ……でも」
菊之助はしゃくりをあげ、瞳に涙を浮かべる。
「菊千代が死んじゃってから、母様の中に僕は存在しなくなっちゃった。……死んだのは、菊之助の……僕の方だと思い込んでるんだ!」
溜め込んでいたものを吐き出すように、菊之助はそう怒鳴った。
そして、ぽつぽつと自分の身の上を話始めた。
やれやれ、間一髪だったね。
「……あれ……?さっきのお店のお姉さん?」
「……僕は男だよ。あんたとおなじね」
「!」
子供はハッとした顔をしてから、俯いて肩を震わせる。
「……僕は桃矢だよ。……あんた、名前は?」
「き、菊千代」
「僕が聞いてるのは、あんたの『本当の』名前だよ」
僕の言葉に、顔を強張らせ、子供は視線を右へと反らす。
「…………菊之助(きくのすけ)」
「ふーん。……なるほどね」
菊之助の名前を知った僕は、すぐに霊視で菊之助の過去を見た。
「あんたは何でそんな格好してんの?」
菊之助の女装の理由は分かったが、僕はあえて聞くことにした。
「……母様が、それを望むから」
「……」
「僕には、妹がいたんだ」
無言で先を促すと、菊之助はぽつりぽつりと呟くように話始める。
「菊千代って言うのは、僕の妹の名前で、女の子が欲しかった母様は、菊千代をとても可愛がってた……勿論、僕にも優しくしてくれたよ……でも」
菊之助はしゃくりをあげ、瞳に涙を浮かべる。
「菊千代が死んじゃってから、母様の中に僕は存在しなくなっちゃった。……死んだのは、菊之助の……僕の方だと思い込んでるんだ!」
溜め込んでいたものを吐き出すように、菊之助はそう怒鳴った。
そして、ぽつぽつと自分の身の上を話始めた。