妖精の涙【完】
「わしは2年前に城から無理やり引退という理由で追い出されたんじゃ。わしはまだまだ現役だったにも関わらず一方的にのう。原因はわかっておるがやはり納得がいかん」
「原因はわかってるんだね」
「そうじゃ。ぽっと出の胡散臭いじじいに王の側近と言う座を奪われたのじゃ。そして出禁にされてしもうた」
じじいがじじいだってさ、とギーヴが言ったが無視した。
目の前にいる老人は両手を握り締め、その手を震わせていた。
「バレスとかいうじじいめ…あいつのせいでまだ王になって間もない陛下が余計なことを考えるようになってしもうた」
聞けば、バレスという老人がアゼルに何かを吹聴したらしい。
その何か、とは。
「フェールズは人知を超えた秘密があり、その秘密のおかげで今の国がある、と。そしてその秘密に関係するものを消せばフェールズを引きずり落とせるとそそのかしたんじゃ」
その秘密とは恐らく契約を含めた妖精に関することだ。
引きずり落とすとは、財政のことだろう。
彼は妖精との契約を切ればフェールズの財政は苦しくなり貿易が本来あるべき均衡に近くなる、とでも言われたのだろう。
全ては偏った金の流れを正すために。
「あなたが知っているのはそれだけか?」
純粋に聞けば老人は驚いた顔をした。
「なんじゃ、疑っておるのか」
「そうではない。真新しい情報が得られないのであればここを俺たちは去るだけだ」
「待ってくれ…待ってくれ…」
頭を抱える彼にため息をつくと2人に目配せをし、ドアを開けた。
すっかり温まった体に冷気が当たると余計寒く感じた。
白い息に嫌気がさしていると、裾を強く引っ張られ振り向いた。
そこには縋りつくように腕に掴まってくる老人がいた。
「待ってくれ…」
「はあ…では、もう1つ聞く」
項垂れている彼の肩がビクッとした。
「300年前まで続いていた争いについて知っていることはあるか」
「も、もちろんじゃ…」
「よし、全部話せ」
「そ、そんなこと聞いてどうするんじゃ。フェールズの者に教えることなど何もないぞ!」
「そんなのじいさんに関係ねえだろ。知ってること全部吐けばそれでいいんだよ」
このじいさんが城の関係者だったとは思わぬオマケだったが、最初からこれについて聞こう、とオルドは思っていた。
ギーヴもそんな彼に気づいていたのか便乗して老人に強めに言った。
「フェールズではその当時について一切詳しく伝わっていない。王である俺も知らないのもおかしな話だ」
「なんじゃと!?」
再び家の中に戻りそう言うとヒステリックに老人は叫んだ。
「冗談はよさんか!300年前なんぞつい最近じゃろうが!」
それはごもっともなのだが、知らないものは知らない。
「おじいさんが知ってることを話してくれたら連れて行くよ」
ケイディスが穏やかになだめると老人は項垂れよろよろと椅子に腰かけた。