妖精の涙【完】
「…いいよ」
私が微笑むと、ラファも微笑んだ。
近づいてくる紫色の目が伏せられて、私も目を閉じた。
ゆっくりと重なった唇から流れ込んできた大量の流れは、頭に到達すると全身に広がった。
「うう…」
体が燃えるように熱かった。
それと同時に軽くなるように感じた。
ぴたりと何かがはまる感覚。
ずれが正常に戻されていくような…
私の中にある人間と妖精の血が混ざり合うような、そんなイメージ。
唇が離されたことがわかりパチリと目を開けると、すっきりとした顔のラファと曇った表情のソーマがいた。
「しばらくは動けないと思うけど、だんだんなじんでくると思う」
ラファに言われてゆっくりと頷いた。
「行こうラファ。君には時間がない」
「うん…ねえ、オルド、聞いてる?」
眠っている彼に向かってラファは声をかけた。
「今までありがとう」
ラファの口から出た言葉はお礼の言葉で。
私には意外だった。
「あのね、オルドが一番好きだったよ、僕。一番対等に扱ってくれた主だったよ。君はいい王様になれる。だからね、早く起きてよ」
彼がずっと着ていたローブを脱ぐと。
その背中には4枚の羽があった。
もうフードもローブも必要ないのだ。
「…さよなら」
ローブをオルドにさっとかけたとき、一緒に聞こえた言葉を聞いて。
私は涙が出た。
目を閉じたままの彼を見届けると、ソーマと共に飛び立ったラファ。
振り返ることはなかった。