妖精の涙【完】
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流血眼。
それがこの病の名前である。
別名、月光病。
ごく稀に、月光のエネルギーに当たり過ぎた羽化前の妖精がかかる病で、両目から血を流し死に至るという病。
この病は妖精の中でも長年不治の病とされ、これにかからないよう親は子を外に出す時間を制限し、細心の注意を払う。
しかしエネルギーの吸収率には個人差があり、外にいる時間が少なすぎると体調を崩しやすくなる。
そこでシルバーダイヤが重宝されるようになった。
エネルギー供給の調節がしやすく、妖精王のみが作り出せるシルバーダイヤは使い切ればただの砂になり扱いやすかった。
さらに、使い切る手前のシルバーダイヤを水に入れたままにすると、だんだんとその輝きは陰り、今度はエネルギーを吸収するようになり、月光病初期の子供にはこれを与えて事なきを得ていた。
だが、すぐに与えなければならず間に合わなければ死に至り、常時持たせておくわけにも親が持っているわけにもいかず使用が難しかった。
人間界で流行した謎の病もこれの一種と考えられ、妖精界のエネルギーが人間界に流れ込み蓄積し、さらにシルバーダイヤのエネルギーも吸い取った土壌や植物が各地に広がり一斉に猛威を振るった、と考えられる。
病が治まった原因ははっきりとはわからないが、人間が免疫をつけたことが要因になったと推測されている。
しかし近年、やっと薬が開発された。
主成分は妖精の羽。
亡くなる前に了承をした妖精や亡くなってから家族の了承を得た妖精から新鮮な羽を提供してもらうことで、その新薬は子育てに悩む夫婦の救世主となっている。