妖精の涙【完】
紅葉
陛下の体調が回復した、という知らせが届いた。
それを聞いてリリアナは安堵の表情を見せた。
「よかったですね」
「そうね。またいつもの日常に戻るわ」
ティエナの育てたイエローコリンは咲き、この部屋に飾ってある。
こうして1輪だけを差しておくのもなかなか風情があった。
それをリリアナは気に入っているようで、なかなか咲かない自分のイエローコリンにぶつぶつと文句を垂れながらも水をちゃんとあげている。
「あのさ、2人ともこの後時間ある?」
「ケイドお兄様…」
ノック無しにケイディスが部屋に入ってきた。
以前もそうだったから治す気は微塵もないらしい。
「もし着替えてる途中だったらどうするのよ」
「それは大丈夫。今さらだから」
「もう!」
拳を握るリリアナに目をぱちくりとさせているとケイディスが説明してくれた。
「小さい頃は僕たちが着替えさせてたんだ。一緒にお風呂も入ってたし」
「昔の話よ」
「まあその話は今は置いておいて、時間、ある?」
山に行かない?
と、ケイディスは笑った。
「ピクニックに行こう。お弁当とか用意して」
ティエナはリリアナと顔を見合わせた。