妖精の涙【完】
「…どんな?」
僕が首を傾げるとギーヴはちょっと笑った。
「とぼけんな。妹にしてはどこでそんなこと覚えたんだ、って思ったことぐらいあるだろ」
「うーん…わからないなあ」
わからないふりを貫き通す僕たちにギーヴは説明した。
「まあいい…俺はリリアナ専用の文通相手兼情報屋だ。おまえたちに送ったはずの手紙をなぜかあいつが読んだらしく接触してきた」
「リリアナ…?あいつ…?」
「ふっ、気にくわないか?」
「君の口から聞くと変な感覚がする」
そりゃ嫉妬だ、とさらっと言われて頭を抱えた。
「んで、俺がどこの誰で兄たちとどういう関係で今はどこにいて何をしているのか、とすげえ聞かれたんで全部答えたわけさ。そうしたら合格だ、とか言われて拒否権はない、自分の手伝いをしてほしい、って持ち掛けられた」
持ち掛けられたっていうかふっかけられたの間違いだろう。
拒否権はないって…なんて強引な。
「何の手伝いだ?」
終始混乱している僕に代わってオルドが聞いてくれた。
「いずれは兄たちの元を離れてどこかに行くから、世間知らずだと笑われたことすら理解できないような馬鹿なフェールズ王国の王女にはなりたくない、だからいろいろと教えてほしい、だってさ」
「なっ…」
なんて健気…!
僕は緩む口元に手を当てた。
「それは身辺調査と関係があるのか?」
「やっぱ知ってんだな」
まあいいけど、とギーヴは続けた。
「リトルムーンは知ってるか?」
「ああ。イエローコリンの変種だろ」
「まあ実際は栽培期間が短い関係でミニサイズになったただのイエローコリンなんだが、どうやって育てているのか調べてほしいって言われてな。ちょうど近くの地区にいたんでフロウ地区に赴いたわけさ。その子の前の侍女については元貴族だったから情報は集めやすかったな」
それだけの言葉でもう十分だった。
「つまり、ティエナは来るべくしてここに来られたわけね…」
「つまりそーいうことだ。彼女の採用は俺が実力を行使した」
「職権乱用の間違いじゃないの」
「そんな細かいこと気にすんな、ストレスたまるぜ?」
「大きなお世話だから!」
くそう、オルドがギーヴに突っかかる理由がよくわかった。
今まで僕に対する風当たりは弱かったのにいつのまにか強くなってきてる!