妖精の涙【完】
…馬車で2時間は結構きつい、と思ったが黙っておいた。
慣れていなかったせいもあるが、初めてここに来た時もそれぐらい乗って本当はお尻が痛くなっていた。
クッションも何もなかったのが原因でもある。
「じゃあ待ってな。呼んでくる」
しかしギーヴは反対せずさっさと走って行ってしまった。
「リリアナ様、2時間ですと少々退屈かもしれませんが…」
「平気よ。景色を見ていればあっという間に着くわ」
そういうことじゃないです。
と言えるはずもなく、ギーヴが連れてきた馬車に3人で乗り込んだ。
そして中を見てビックリ。
なんと、ちゃんとクッションが用意されていた。
「ケツ痛くなったっつー文句は聞かねえからな」
「言葉遣いを改めなさい」
「自己責任」
「大丈夫ですよ、クッションがありますから!」
ギーヴのボケを聞きつつ、リリアナに続いて乗ったティエナが腰にもクッション、腕の中にもクッション、の状態で意気揚々と言い放つと2人は目をぱちくりとさせた。
その間にも馬車は出発する。
「…そ、そうね」
「はい!」
ティエナの気迫にリリアナがたじろいでいると、2人の向かい側に座っているギーヴがクスクスと笑った。
「ずいぶんとテンション高けえな」
「そ、そうでしょうか…騒いで申し訳ありません」
ごもごもと喋り体を小さくさせると隣から助け船が出された。
「そう?いつもこんな感じよ」
「いつも?どこが?」
「最近は大人しくなったけど、まだまだ子供なんだから」
「リリアナ様も子供です、大人びていますが」
「そうね、あたしもまだまだ子供ね」
あたしの方が年下だものね、と淡々と話す彼女にだんだんと冷静になってきた。
確かに子供じみた言動だったかもしれない。
「すみません、もう黙ります」
「いいわよ別に。楽しみなのはあたしも同じよ」
しゅんとするとリリアナがマネをして余っていたクッションを胸に抱いたためつい笑った。
なぜだかよくわからないけど、とにかく楽しかった。