妖精の涙【完】
「本当なのか今の話は」
ようせいおうとやらの子供かどうかを聞いているんだろうか。
「フェールズの者、までは…」
正直に答えると眉間にしわを寄せられたがこっちがそれをしたいぐらいだ、と思った。
ああ、体が痛い。
喉もカラカラだ。
それに誰この人。
全然状況がわからない。
「ああ、水か」
わあすごい。
欲しいものがよくわかったなあ、と水を注いでくれたコップをもらって飲もうとしたら傷のせいで腕が全然上がらなかった。
めちゃくちゃ痛い…
「うう…」
涙が出そう。
目の前にあるのに飲めないなんて。
「傷が痛むのか」
俯きながら頷くとひょいとコップを取り上げられた。
なんで取り上げるの…とさらに悲しくなっていると口元にコップの淵が当たった。
「何をしている、飲みたいんだろう」
はい、そうです。
と、羞恥を捨てて口を開き顔を上に傾かせると水が流れてきた。
…主に鼻。
「ゴホゴホゴホッ…!」
鼻も痛い。
咳で体が痛い!
全部痛い!
水入れすぎ!
ていうか下手!
「…すまない、慣れていないんだ」
いや、飲ませるのに慣れてたらなおさら正体が気になっていたところだ。
今度は1口分の水だけにして再チャレンジしてもらったら上手くいった。
「あ、ありがとうございます…?」
グダグダ感が否めなかったので疑問符がついてしまった。
「いや…しかし不便だな、腕が上がらないのは」
誰のせいだ、とジトっと見ると見つめ返された。
「こうして見てもやはり妖精には見えん」
ようせい…妖精か。
そのことに気づいてさらに変な人、と思った。
自分は普通の人間だ。
「傷が治るわけではなく、水も飲み、体温も人並みだ」
この人も天然だ、と確信した。
おでこくっつけて体温計る人なんて今どき少ない。
「あの…」
それ以外にも天然要素があった。
これ以上は耐えられない、と思いそれについて意を決して言及した。
「服、着てもらえませんか」
なぜかこの人はずっと上半身裸だった。