俺様王子とふたりきりの教室~甘くてキケンな1ヶ月♡
洸、まだ来てないんだ...。
窓から正門に目をやるけど、そこに登校してくる彼の姿はない。
先生が言ったとおり、洸が遅刻だなんて、珍しい。
珍しいというか、初めてだ。
たしかに今日はテストを返却してもらうだけではあるけれど、優等生の洸が、今まで一度も遅刻しなかった洸が、
最後に限って遅刻なんて...。
ーーなんだかもう、洸に会えない気がした。
洸はこのまま、カナダに行ってしまうんではないか。
カナダで1ヶ月過ごし、そのあいだに、わたしと過ごした1ヶ月なんて、忘れてしまって...記憶の片隅さえ、残らず...。
洸、やだ、待って。
行かないで。
無意識といっていいほど、わたしは気がつけば洸に電話をかけていた。
洸、お願い、出て。
それなのに、わたしの耳に響くのはプルルルルーーという機械音だけで、
洸のあの優しい声は届かない。
わたしの声も、届かない。
わたしまだ、なにも伝えてないのに。
「洸......っ」
洸に会いたい。
校舎から飛び出す。