俺様王子とふたりきりの教室~甘くてキケンな1ヶ月♡
ーー洸が好き。
王子様の洸のことは、ほんとうに憧れていた。
だけど今は...
俺様な本性の洸を、好きだと思う。
本性を知る前よりもずっとずっと...洸のことが好きだ。
あんなにわたしに優しくしてくれた洸に、“気をつけていってらっしゃい”も言えていない。
洸はきっと、わたしのことなんて忘れるだろう。
だってそうでしょう?わたしに“忘れてくれ”って言ったんだから。
自分はすぐに忘れられるってことでしょう?
だから洸のいうとおり、精一杯忘れる努力をするよ。
でも、その前にお願い。
“好き”と“いってらっしゃい”だけ、伝えさせて...。
それ以上なにも、望まないからーー
校舎から抜け出したわたしは、正門をくぐり、目の前にある横断歩道に飛び出したーー
「ーー晴香ッ!」
必死なわたしはなにも見えていなかった。
なにも聞こえてこなかった。
目の前にバイクがブン!と通り抜けた。
あと数センチのところで...当たりそうだった。
「あ...ぶね...」
耳元でささやくその声は震えていた。
わたしを後ろから引きずったその手も...あきらかに、震えていた。
「前見ろ、バカ...」
心底安心したように大きく息を吐いた彼。
わたしは都合のよい夢を見ているのかと思った。
わたしが今すぐ会いたかった彼がーー
洸が、わたしを助けてくれたから...。