俺様王子とふたりきりの教室~甘くてキケンな1ヶ月♡


正門から一番近い校舎の1階にある職員室に到着する。


そこにいた先生全員に、「大変だったね」「治ってよかったね」「かばうなんてすごいよ」と口々に声をかけられた。


わたしはどうやらこのたび先生全員に名前と顔を覚えられただろう。


「1ヶ月補習がんばろうな!

プリント用意するから、教室で待っておいてくれるか」


担任の田中先生に笑顔でそう言われ、わたしは教室へと向かった。


わあ~、久しぶりだ。

たった1ヶ月だけど、ずいぶんと懐かしく感じる。


廊下を歩きながらそんなことを思った。


窓からは、真ん中にそびえ立つ校舎と中庭だけが見える。


文科系部活動生は、真ん中の校舎にある各教科の教室を使って部活動を行っているようだ。


教室に入らないと見えないけど、廊下側の窓とは反対の教室内の窓からはグラウンド全体が見渡せて、

体育会系部活動生は太陽が照りつける中、一緒懸命練習をしているだろう。


わたしが今いる校舎にはーーだれもいない。


なぜなら、ここには1、2年の教室しかないからだ。


3年生になったら、夏休みに勉強しにくる生徒もいるだろうけど、

3年生の教室は職員室がある校舎の2、3階にあるため、実際生徒が勉強しに来ているかは定かではない。


とにかくーーわたしが今いる校舎は、とても静かだ。


部活動をしている声や音だけが心地よく聞こえてくる。


もしかしたら、わたしひとりしかいないのかも。

きっとそうだろう。


うちは県内では一番偏差値の高い高校だから、

授業をさぼったり、欠点を取りまくったりして夏休みに補習をしなければならない生徒はまずいないんだ。


一番偏差値が高いなんて言ったらわたしも賢いみたいに聞こえるけど、奇跡的に合格できたも同然だし、まわりのレベルが高すぎてクラスでは下3人のなかに入ってると思う...。

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