俺様王子とふたりきりの教室~甘くてキケンな1ヶ月♡


このクラスには、正直“王子様”ってかんじの人はいない。


もちろんかっこいいって言われている人たちはいるけれど。


“王子様”って言葉が似合うのは、きっとこの学年...いや、この学校で望月くんだけだと思う。


望月くんと同じクラスになれた子たち、うらやましい。


例えわたしみたいな平民だって、同じクラスになれたら話す機会だってあるはずだ。


それに、望月くんは常に優しく返事してくれるらしいし。


いいなあ、いいなあ。


だけど、なにかきっかけを作って彼に話しかける勇気なんて、わたしにはない。


きっと彼とは一度も会話することなくこの一年間を終えるのであろう。


来年、同じクラスになれるといいな。


まだ一学期が終わってもいないのにこんなことを考えてしまうわたしは、かなり彼に対して好意を抱いてしまっている。


心のなかで憧れるくらい、いいよね?

うん、いいはずだ!!

そんな自問自答をし、先生が来るまでに教科書とノートを机に用意した。


「...やべ~...」


ふと隣からそんな声が聞こえてきた。


様子をうかがうと、隣の席の早川拓海(はやかわたくみ)くんがなにやら困った顔をしていた。


「早川くん、どうしたの?」


わたしの問いに、彼は

「数Ⅰと数Ⅱ間違えて持ってきちゃった」と数Ⅰの教科書をこちらに向けた。


本来ならば数Ⅱが必要だ。


「先生怒られるわ~」


早川くんは苦笑いして間違いの教科書を机の中にしまった。


「大丈夫だよ!てきとうにページ開いてたらばれないって!」


なんてずる賢いことを言ってしまう。


もしバレて怒られるのは彼なのに。


「もし当てられそうになったらこっそりわたしの教科書見たらいいよ!」


「うーん。

じゃあもしそうなったら真瀬に頼ろっかな!」


「そうしてそうして!」


「ありがとな!」


早川くんはニカっと白い歯を見せて笑った。


太陽みたいにまぶしい笑顔にわたしもつられて笑う。


わたしはあまり男子と積極的に話すタイプではないけれど、

早川くんはとっても話しやすい。


彼自身が、だれとでも仲良くできるタイプなのだ。


そのとき先生がやってきて、早川くんは表紙の色がちがうことがばれないように先に教科書をてきとうに開きながら、

わたしに顔を向けていたずらっ子みたいにニヤリと笑った。

< 7 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop