冷たい指切り  ~窓越しの思い~
『皆さん、こんにちは。
お昼の放送を担当する2ーCの伊藤千尋です。』

いよいよ始まったお昼の放送。

先週までは、クラブ紹介や行事・テストとばたばたしていたから

三年生が担当をしていたが

今日から、うちの伊藤さんも交替で木曜を担当する。

始めの第一声は……少し上擦っていたみたいだけど

直ぐにいつもの調子を取り戻した。

自分のクラスの生徒がすると、親のような気分になるらしく………

びっくりする程、落ち着かない午前を過ごした。

昼食は、もちろん数学準備室。

なるべく職員室でとるように言われているが………

こんなにソワソワした姿を、他の教師に見られたくない。

特に樹に見られたら、何を言われるか…………。

いつもの屋上だと、放送が上手く聞こえないからやむ終えない。

『それでは頂いたお便りを、抜粋して読ませて頂きます。
放送部の皆さん、こんにちは。
今日は、私の恋愛の悩みを聞いて下さい。
私は、付き合って2年になる彼氏がいます。
最近彼に……体の関係を迫られています。』

ブッ!!

思わず吹き出してしまった。

………………この過激な質問は………

お嬢様学校と言われているわが校では、あり得ない。

これを取り上げたこと…………今日は職員会議だなぁ。

遅くなることを覚悟しながら、相談コーナーに手紙を送った生徒のことを考える。

普通の高校生だと………友達同士で相談するんだろうけど……

うちだと……難しかったんだろうな。

それで彼女は……答えに悩んでたんだ。

この後、彼女がどう答えるのか………興味がわく。
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