冷たい指切り  ~窓越しの思い~
『お手紙………ありがとうございました。
私は………このお手紙を頂いて、何度も何度も読み返しました。
これを扱っていいのか?私に……きちんとお返事が出来るのか?
……………私は……まだ恋愛をしたことがありません。
人を好きになることの……本当の意味は……理解できてないと思います。
そんな私が話しても……良いのだろうかと……悩みました。
担任の先生に相談すると『私の精一杯な気持ちを伝えたら良い』と言われ……
お返事には、ならないかも知れませんが……
勇気を出してお手紙をくださったお気持ちに……お答えすることにしました。
…………先ほども言いましたが、私に恋愛経験はありません。
なので、もし不快な思いをされたら……すみません。
結論から言うと………
私は……まだ早いのでは??と……このお手紙を読んで思いました。
でも決して、年齢やお二人の間のことではなく……
お手紙を出されるほど悩まれてるお気持ちのことです。
どうしよう?と悩むなら、進んでみるという選択肢もあります。
けれど、今回のことは……進んでみて後悔するには………
女の子にリスクが、大きい気がするのです。
私の考え方が間違っていたら、ごめんなさい。
でも、出来るなら……後悔しない恋愛をしてもらいたいんです。
なので……
ここから先は……自分で結論を出して下さい。
大人の人はみんな、ダメだと言うと思います。
うちの学校だと、放送の後で『手紙を出したのは誰だ!』と
聞かれるでしょう。
なので、放送が終わったら直ぐに……分からないように捨てます。
名前は書かない決まりなので、筆跡が分からないと探せないから
安心して下さいね。
初めての相談コーナーは……結論の出ない内容になってしまいましたが
また、送って下さいね。
それではこの曲にのって…………………』

はぁ~。

詰めていた息を、一気に吐き出す。

思った以上の答えに……頭が痛くなる。

多分、部の責任者の大川先生は……胃に穴があいているかもしれない。

手紙を出した生徒の気持ち。

教師としての立場。

大人としての考え。

彼女の純粋さ。

どれも分かるし………どれも守りたい。

けど……………現実は??

教師は、不純異性行為を止めないといけない。

保護者から預かった大切な生徒が、違う道に進もうとしているのを

知っててみすみすほっておくことは出来ない。

手紙を出した生徒は

2年付き合って大切だと思う彼氏から誘われて、心は動いているのだろう。

ただ、怖いとかこのまま彼氏と続くのか?子供は大丈夫だろうか?と

不安も沢山あるはずだ。

友達に相談したくても、この学校にどれくらいの生徒に彼氏がいて

どれくらいの子が親密な付き合いをしているのか……分かりにくくて

話すことが出来ないのだろう。

多分、この放送部に相談したのは………賭けだったはずだ。

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