冷たい指切り  ~窓越しの思い~

6月

真っ白い半袖のセーラー服に、身を包んで登校する生徒達。

「先生、おはようございます!」

「あっ、笑った。」

女子高生独特の、黄色い声が校門で響く。

「相変わらずモテますね!」

今朝も笑顔でからかう彼女。

結局、飛び出して行った俺は………

多くの生徒に阻まれて、彼女の元にたどり着けなかった。

放送を聞いた多くの生徒が、感銘を受け

うちの学校ではあり得ない大騒ぎとなったのだ。

事態の収集に、教師は大慌てとなり

結果…………大川先生の監督の元、今回は探さないという方向で落ち着いた。

その代わり、放送前に先生のチェックが入ることになったのだ。

教師の間で『うちの子は………』は、この学校でも通用しなくなったのだと

今回のことが教訓となった。

『お嬢様だから大丈夫』という安心はない。

事態が穏便に収まった要因に、彼女の放送もある。

誠実な話しが、他の生徒の心を掴んだのはもちろん

手紙を出した生徒の心にも届いたからだ。

『前回は、私の手紙で混乱を招き申し訳ありませんでした。
放送を聞いて、沢山の生徒の皆さんが口々に意見を言っているのを聞きました。
批判や肯定。
様々な意見の中で、一番多かったのが
好きな彼とそうなる時は、自分が迷わず幸せだと思える時がいいと。
伊藤さんがおっしゃったことです。
私も放送を聞いて……焦ることではないのだと。
彼としっかり話して、待ってもらおうと思います。
もしかしたら、私の気持ちが伝わらず別れることになるかもしれないですが
ここまでお互いを大切に付き合ってきたのだから……
勇気を出して話してみます。
今回は本当にすみませんでした。
伊藤さん、ありがとうございました。』と。

もちろんこれにより、彼女は一躍時の人になった。

デビューがいきなりホームランなのだから。

結局………彼女のご褒美は、いまだに実現していない。

次の日から今日まで、お互い大忙しだった。
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