冷たい指切り ~窓越しの思い~
「先生……………。
ありがとうございました。」とお礼を言われて頭を下げられた。
……………………??……………………?。
引き受けたことが、それほど嬉しかったのかと………不思議に思っていると。
「先生のお陰で、放送……………上手くいきました。」と言った。
「いえいえ。伊藤さんの頑張りですよ。
誠実に心を込めて答えたから……相手に伝わったんだと思いますよ。
以前『よい育てられ方をされたのですね。』と言ったことがありましたよね?
伊藤さんにとっては、嫌な言葉だったようですが………
僕から見ると、本当に良い子で………
大切に育てられたのだと思いましたよ。
………………今日お話に来られたのは、その辺りのことですよね?
今度は僕が、精一杯受け止めます。
悪口だって、嫌な言葉だって構わないから……
思っていることを、聞かせて下さい。」
そう話すと……………
目の前の彼女は、ポロポロと涙をこぼし始めた。
やっと泣いてくれた。
彼女の涙を見て………安心を覚える。
静かに…………本当に音もなく…………
しとしとと………………雨が降るように泣いている。
この静かな時間がいとおしく感じていると。
「ごめんなさい。」と…………
突然、笑顔で顔をあげる彼女。
多分、俺に気を使って…………無理に涙をおさめたのだろう。
「先生が言われたように………家族の問題です。
……………………………………………。
うちの家は、両親と姉と私の四人家族です。
父はサラリーマン、母は専業主婦でしたが……私が五年生になった時から
パートに出るようになりました。
中学二年までは……パートでしたが
正社員になった頃から、バリバリ仕事をするようになって……
帰りも10時を回るようになりました。
私は姉と二人でいることが増え
姉の作るご飯を食べ…………姉が母親替わりになりました。
姉は……部活も辞めて、家事を全部引き受けたのに………
いつも笑顔でした。
でも私は…………そんな姿を見るのがしんどくなって……
家に帰らず、部活を頑張るようになりました。
高校に入ってからは……『出張』だと言って両親が泊まりでいないこともあって
初めは……信じていたんだけど………………。
…………………………………………………。」
そういうと………彼女はうつ向いて話さなくなった。
「うん、わかった。
伊藤さんの辛さを、全部理解していないだろうけど………
俺も似たような境遇で育ったから………少しは分かるかな?」
言葉使いの違いに、目を丸くする。
可愛い。
純粋に可愛いと思った。
生徒なんだけど……それとは違う…………説明しにくい可愛いさ。
………………なんだろう?
一人で不思議な感覚に疑問を持ちながら
目の前で、驚きを隠せない彼女に
「自分の言葉で一生懸命話す姿を見てたら……
俺も、先生として返事をしたらいけないような気持ちがして………
今は教師ではなく、一人の年上の男として聞くよ。
その方が、話しやすいでしょう?
俺も先生として答えると………無難な返事をしそうだからね。
ここを出たら、また先生に戻るよ。」と答える。
「はい。」
再び笑顔が出たのを確認して
「それで、去年からがんばり屋さんになった??
トップクラスになって、性格も変わったって聞いたけど…………。」
「そうですね。
一年生の夏休み、姉の優しさや愛情が苦しくなって……
家にいないことが多くなりました。
……………その日もショッピングに出たんだけど…………
罰ってあるんですね!
……………姉を困らせたからかな?
通りを挟んだ向こう側に、若い女と腕を組んで
アクセサリーのお店に入る父を見たんです。
明らかに浮気してて……………出張なんてウソだった。
そうなると、母までウソをついてる気がして………電話して…………。
もう全てを疑うようになりました。
それなのに、うちに帰ると何も知らない姉は…………
笑顔で私の好物を出してくれて………
『バカみたい!!』
『頑張ったって、浮気してるんだよ。』
『親に騙されてるんだ!』と…………
叫びたい、どしようもない感情が生まれたんです。
でも、純粋に家族を信じて疑わない姉を見ていたら……
やっぱり傷つけられないって思って。
私が………………この家を出る決心をしたんです。」
「それで県外の大学?」
「はい。」
ありがとうございました。」とお礼を言われて頭を下げられた。
……………………??……………………?。
引き受けたことが、それほど嬉しかったのかと………不思議に思っていると。
「先生のお陰で、放送……………上手くいきました。」と言った。
「いえいえ。伊藤さんの頑張りですよ。
誠実に心を込めて答えたから……相手に伝わったんだと思いますよ。
以前『よい育てられ方をされたのですね。』と言ったことがありましたよね?
伊藤さんにとっては、嫌な言葉だったようですが………
僕から見ると、本当に良い子で………
大切に育てられたのだと思いましたよ。
………………今日お話に来られたのは、その辺りのことですよね?
今度は僕が、精一杯受け止めます。
悪口だって、嫌な言葉だって構わないから……
思っていることを、聞かせて下さい。」
そう話すと……………
目の前の彼女は、ポロポロと涙をこぼし始めた。
やっと泣いてくれた。
彼女の涙を見て………安心を覚える。
静かに…………本当に音もなく…………
しとしとと………………雨が降るように泣いている。
この静かな時間がいとおしく感じていると。
「ごめんなさい。」と…………
突然、笑顔で顔をあげる彼女。
多分、俺に気を使って…………無理に涙をおさめたのだろう。
「先生が言われたように………家族の問題です。
……………………………………………。
うちの家は、両親と姉と私の四人家族です。
父はサラリーマン、母は専業主婦でしたが……私が五年生になった時から
パートに出るようになりました。
中学二年までは……パートでしたが
正社員になった頃から、バリバリ仕事をするようになって……
帰りも10時を回るようになりました。
私は姉と二人でいることが増え
姉の作るご飯を食べ…………姉が母親替わりになりました。
姉は……部活も辞めて、家事を全部引き受けたのに………
いつも笑顔でした。
でも私は…………そんな姿を見るのがしんどくなって……
家に帰らず、部活を頑張るようになりました。
高校に入ってからは……『出張』だと言って両親が泊まりでいないこともあって
初めは……信じていたんだけど………………。
…………………………………………………。」
そういうと………彼女はうつ向いて話さなくなった。
「うん、わかった。
伊藤さんの辛さを、全部理解していないだろうけど………
俺も似たような境遇で育ったから………少しは分かるかな?」
言葉使いの違いに、目を丸くする。
可愛い。
純粋に可愛いと思った。
生徒なんだけど……それとは違う…………説明しにくい可愛いさ。
………………なんだろう?
一人で不思議な感覚に疑問を持ちながら
目の前で、驚きを隠せない彼女に
「自分の言葉で一生懸命話す姿を見てたら……
俺も、先生として返事をしたらいけないような気持ちがして………
今は教師ではなく、一人の年上の男として聞くよ。
その方が、話しやすいでしょう?
俺も先生として答えると………無難な返事をしそうだからね。
ここを出たら、また先生に戻るよ。」と答える。
「はい。」
再び笑顔が出たのを確認して
「それで、去年からがんばり屋さんになった??
トップクラスになって、性格も変わったって聞いたけど…………。」
「そうですね。
一年生の夏休み、姉の優しさや愛情が苦しくなって……
家にいないことが多くなりました。
……………その日もショッピングに出たんだけど…………
罰ってあるんですね!
……………姉を困らせたからかな?
通りを挟んだ向こう側に、若い女と腕を組んで
アクセサリーのお店に入る父を見たんです。
明らかに浮気してて……………出張なんてウソだった。
そうなると、母までウソをついてる気がして………電話して…………。
もう全てを疑うようになりました。
それなのに、うちに帰ると何も知らない姉は…………
笑顔で私の好物を出してくれて………
『バカみたい!!』
『頑張ったって、浮気してるんだよ。』
『親に騙されてるんだ!』と…………
叫びたい、どしようもない感情が生まれたんです。
でも、純粋に家族を信じて疑わない姉を見ていたら……
やっぱり傷つけられないって思って。
私が………………この家を出る決心をしたんです。」
「それで県外の大学?」
「はい。」