冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「お邪魔します。」

さすが女の子。

我が家で靴をキチンと揃えた人を、初めて見た。

ふだん俺の家に来るのは、高校時代と大学時代の悪友ばかり。

しかも、飲みに来るか終電無くして泊まりに来る。

…………そういや………仕事始めて4年。

女の子って………この子だけだ。

荷物が増えて、忙しくなって………片付けるのがおっくうになった今………

家に呼ばなくなった。

決してモテない訳じゃないけど………あえて彼女を作ろうとはしてなかったな。

気を使うのも面倒だし………。

「その辺に座ってて。」

二人掛けの小さなソファーとローテーブル。

三段の棚が2つ並んで角に置いてあるだけの、シンプルな部屋だ。

キッチンには、二段の小さい冷蔵庫とレンジ……

食器を入れる小さい棚があるだけの、こちらもシンプルだ。

「冷蔵庫にさっき買った弁当や飲み物、デザートを入れとくから
なるべく沢山食べてね。」

見られてまずそうな物だけ、大急ぎで片付ける。

洗濯物は………樹の家に持って行って、プライベートな物は……

寝室に隠した。

あっ!布団………どうしよう。

さすがに俺の臭い布団じゃ~嫌だよな。

う~ん。

小さいから、敷き布団はソファーで良いとして…………

暑いから、掛ける物もバスタオルとかで良いかな?

シャンプーが男物かぁ~。おまけにリンスもないんだよなぁ~。

コンビニに連れて行って、要るものを買わせた方が早いかぁ!

タイムリミットまで後、45分。

「コンビニ行くよ!」

急いで連れ出して、遠慮する彼女に「時間がない!!」と急かせて

買わせた。

「じゃ、行って来るから。
困ったことがあったらメールか電話して。
ベルが鳴っても出ないこと!
冷蔵庫の物は……腐ると大変だから、遠慮しないで沢山食べなさい。
帰るって決めるまで、何日いても良いから
テスト勉強はしっかりしてね。」

それだけ伝えて、職員会議に急いだ。

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