冷たい指切り  ~窓越しの思い~
始業式とホームルームで帰れる今日は

昼食前に手伝いを頼む予定だったが…部活に顔を出してからにしたいというので

昼食が終わった午後1時に準備室に来てもらった。

「こんにちは」

ノックして、笑顔で入って来る。

「ごくろうさま。部活の方は大丈夫でしたか?」

放送部だという彼女は、昨年は朝を担当していたようだが

今年度は、花形のお昼を担当することになったらしい。

「はい、木曜が担当日なのでしっかり聞いてくださいね。
投書箱に入れてもらえたら、先生のお悩みにもお答えしますよ。」と

可愛らしく首を傾けて微笑む。

「悩みが出来たらお願いしますね。」

お昼の放送は、月に何度か生徒の投書でお悩み相談をしている。

恋や学業、部活に友達関係と……

この年頃は、悩みが多くて大変そうだ。

俺くらいの年齢になると『成るようにしか成らない』と諦めてしまうけど

若いというのは……エネルギーを使いたがるものなんだなぁ~

俺の高校時代も………そうだったのかな??

昔を思い出していたら

「石井先生…………。
だったら、私の悩みは先生が相談にのってくれますか?」と

とても小さな声が聞こえた。

顔を向けると、何事もなかったかのように笑って

「私も、悩みが出来たらお願いしますね。」と教室で見たような

ハキハキとした彼女に戻っていた。

「その時は、いつでもどうぞ。」

その後は、新しいクラスの名前を渡して

クラス名簿と来週予定している、席替えのくじをお願いする。

途中、職員室に呼ばれて席を外しても……休むことなく作業を進めてくれた。

明るく元気なイメージの彼女だったけれど………

先程の言葉といい、真面目さといい………

表の顔とは、別な一面が見えたような気がする。
< 4 / 81 >

この作品をシェア

pagetop