冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「そう言えば、お姉ちゃんから連絡がないんだけど………
何かあったんじゃない??
当日、電話かメールがあるって覚悟してたのに………
5日目の今日まで何の連絡もないって……心配じゃない?
寝不足やご飯を食べられずに
誰かさんみたいに貧血ってことも考えられるよ。
あれだったら………俺が行って、様子を見て来ようかと
思ってるんだけど。」と俺が言うと……。

「あっ!元気そうでしたよ。昨日も連絡があったから。」

「えっ??俺にしないで、妹にしたの??」

連絡先を渡して、教師の家に泊まってると分かったら………

ふつうこっちに掛けてきそうなのに?

不思議に思っていたら

「先生のメモは、渡してないんです。
お姉ちゃんには『先生にならないんだったら、帰らない!』って
『彼氏のところに行ってきます。』って書き直して置いてきたの。」って………。

……………どうりで連絡がないはずだ。

「昨日も電話で
『彼氏とラブラブだから、いつまでだって居られるよ!
心配なら幼稚園の先生になって。
それにお姉ちゃんが忙しい時は、こうやって泊まりに行くから
仕事で遅くなっても問題ないし。』って言ったら、考えてるみたいだったよ。
後、一息かなぁ~?」と………

「でも現実問題、伊藤さんは……どうするつもり?
来年、うちの学校に進学するなら……先ず大丈夫だけど。
外部となると、大変だよ。
慣れない家事をしながら受験勉強って……ありえないし。
うちにずっといてっていうのも………無理だよ。
今度ゆっくり話し合おうって思ってたんだけど……
こうなったら、ゆっくり考えていられないからね。
伊藤さんは……どうしたい?」

俺の質問に……単純なことじゃないって思ったのか………黙りこんだ。

「もちろん、今すぐ結論なんて出ないだろうけど
大切な自分の将来のことだから、ゆっくり考えてみてね。」

今日のところはこれくらいで………と思って、電話を切ろうとしたら。

「………………今が………いっぱいいっぱいなのに……………
将来なんて…………考えられないよ…………。
家族が…………バラバラに……なっちゃうんだよ……………。
あの家にいて……………それを見て…………一人で待つなんて………出来ないよ…………。」と

悲しい声が届いた。

あぁ~、そうだったのか…………………。

彼女の淋しさの深さを………また少し気づいた。
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