冷たい指切り  ~窓越しの思い~
ピンポーン。

「は~い。」と……何の躊躇もなくドアが開いた。

おいおい、確認しろよ!

無防備な様子に怒ろうとしたら

「先生が『今から帰る』って言ったから……ずっとベランダで見てたの!」と

それは嬉しそうに話す。

………………まだ17歳の女の子が、一人慣れない家で過ごすんだから……

淋しいし、怖いよなぁ~

おまけに、将来や家の事も不安で………

「取り合えず、中で話そうね。」

なるべく優しい声を出して、彼女の安心を誘う。

「先生、今日はここで寝る??」

ウキウキしている彼女に、一人で過ごせとは言えない。

「うん。後で樹も来てくれるから……3人で過ごそう。」

ちょうど明日は休日だ。

テスト前の貴重な創立記念日を邪魔してしまうが………

伊藤さんの成績なら、問題ない。

それよりも………心の問題を整理して………早く安定した生活に戻してあげたい。

その為にも、俺一人じゃなく………樹にも協力を頼んだ。

「伊藤さんは、もう夕ごはんは済ました?」

ばつの悪そうな顔に、冷蔵庫と冷凍室を覗いて見た。

………………………。

「ちょっとおいで…………。」

俺のとてつもなく低い声に、ヒィ!と竦み上がる。

自慢じゃないけど………

昔はこれで優位に立っていた時代もあった。

その頃の仲間が樹だから………俺はアイツを全面的に信用している。
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