冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「この状態は、いつから?」

冷蔵庫には、スポーツドリンク1本とお茶が1本。

冷凍室には、前に買ったお弁当のおにぎりらしき物が1個と鮭がひと切れ。

まともな食事をしているようには見えない。

俺の怒りが伝わるのか、怯えた顔でこちらに近づいて来ない。

怒られた子供か野良猫のようだ。

笑いそうになるのを堪えて………

「毎日電話で確認したよね?何て答えた?」

「…………………まだ沢山残ってます…………。」

ウソをついた彼女より、ウソに気づけなかった自分に腹が立つ。

直ぐに携帯を出して、樹に電話する。

二人で少し話したいから、二時間したら家を出て欲しいと伝えておいた。

それなのに、こんなに直ぐかかってきて……かなり驚いてる。

事情を話すと、直ぐに食べ物を調達して来ると言った。

一応前回を踏まえて、彼女に『焼肉弁当は食べたいか?』と確認してみたが

首を振ったので、焼肉弁当は脚下した。

もう怒ってないと告げて、ソファーに座るように促した。

まだ俺を上目使いに見て、怯えを完全に無くしてない彼女。

イタズラ心が湧いてきそうだ。

「お姉ちゃんには、彼氏だって言ったんだよね?
俺と本当に、そういう関係になってみる?」とからかって

手をうごかしてみたら

ピュッと一人分空けて、座り直す。

まさに猫だ。

「ごめんごめん。からかい過ぎた。」

大笑いする俺をキョトンと見る。

「でも、それくらい警戒しないといけないよ!
さっきみたいに、躊躇いもなくドアを開けたり……
今までのように、点々と泊まりあるいたり。
事件に巻き込まれてからじゃ、遅いからね。
今から樹が持って来るご飯だって、何が混ぜられてるか分からないんだからね。」

俺の脅しに笑いながら

「樹先生は、確かに危ないかも!」って。

樹、やっぱりお前は………信用ゼロだ。

「あっ!さっきのは、先生が怖くて避けたんじゃないですからね!
先生の言葉に、ドキドキして恥ずかしかったからだもん。」って………

からかったつもりが、からかわれてドキドキするはめになった。
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