冷たい指切り  ~窓越しの思い~
ピンポーン!

「ちぃちゃん、あそびましょ!!」

アホ………………。

真剣な話し合いをぶち壊す、能天気な声がする。

遠慮することなくリビングに入って来た樹は……

「あっれぇ~!
何二人して睦まじく座ってるの???
もしかして、お邪魔だった!?」

ウルサイ樹を無視して、買って来た袋を開ける。

…………………。

「……………樹君。
俺、焼肉弁当はいらないって言ったよね?
おまけに、どうしてこんなにアルコールが入っているのかなぁ?」

俺の低い声にも、全く動じない樹は……

何処吹く風で…………

「弁当は、俺の。和君も焼肉弁当が良かった??
他にも、ハンバーグと幕の内を買って来たよ。
あっ!デザートは、プリンとアイス、ロールケーキにヨーグルト。
麺とパンとつまみがあるよ。
唐揚げとコロッケ………チョコとスナックとクッキーもあるから問題ないよ!」と

悪びれる様子がない。

「アホ!!
生徒の前でアルコールが飲めるか!」と怒る俺に

「ええっ!
別にちぃちゃんに飲ませる訳じゃないんだし……大丈夫だよ。
だって、お父さんやお兄ちゃんが先生だったら……お家で飲むでしょう?」と

強引な言い訳をする。

「アハハ。
樹先生って面白い!」

あれ程淋しがっていた彼女が……樹の登場に大笑いしている。

アホだけど………樹を呼んで良かった。

「和君、難しいことは食べた後で考えようよ!
ちぃちゃん、どれが食べたい??
あっ!!アイスとビールは冷蔵庫に入れないと!
ちぃちゃん、急いで!!」

訳のわからない命令に、素直に従う伊藤さん。

…………ホントに、呼んで良かったか???
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