冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「カンパーイ!!」

強引にグラスをぶつけて、おおはしゃぎする樹。

結局、樹に押し切られる形で…………ビールを飲むことになった。

ホントに大丈夫か???

「ほらほら、和君。そんな怖い顔でビールを飲んでも………美味しくないよ!
ちぃちゃん、ほとんど食べてなかったんでしょ?
しっかり食べて………ボン、キュッ、ボン………とは言わないけど
もうちょい大きくしようね~」と言っている。

「セクハラだぞ!」

俺達のやり取りが可笑しいらしくて、ずっと笑ってる。

さっきは冷蔵庫の中を見て怒ったが……今もあまり食べないところをみると………

元々食が細いのかもしれない。

「ご飯がいらなかったら、デザートかパンを食べたら良いよ。」

ロールケーキやパンを取りに行くと

「ちぃちゃん、和君に怒られた?…………目が赤いよ。
でもね、怒ると無茶苦茶怖いけど……愛はあるからね。
今だって、優しいでしょう?
ちぃちゃんが心配なんだよね。
俺のことも大好きらしくて、直ぐ怒っちゃうんだよ。」

ホントにアホだけど………

人を和ます天才。

融通のきかない俺の代わりに、いつも周りを優しく包んでくれる。

樹のビールと伊藤さんのデザートを持って行くと………

「ところでちぃちゃん、和君が昔………相当悪かったって聞いた??
今もたまに、片鱗が現れるんだけど………。
それでね、そんな和君でも気にならずに付き合っていけるのなら………
俺のお家に引っ越さない??」

………………………………。

はぁ??

ツッコミどころが多すぎて………何から話したらいいのか悩む。

伊藤さんに至っては……………フリーズした。
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