冷たい指切り  ~窓越しの思い~
あれから何度かコールしたが………彼女が出ることはなかった。

朝、職員室に行く前に放送部の部室を覗いたが………姿はない。

「あれっ?先生、誰かお探しですか?」

放送部の大川先生に話しかけられ

「伊藤さんに二学期のことで………」と苦しい言い訳をする。

人の良い大川先生は

「伊藤さんは先生のクラスですよね?確か………クラス委員でしたかね?
今日は、熱が出たとかで………休みらしいんですよ。
夏風邪は長引くこともあるので、出てきたら先生の所に行かせます。」と

断ろうとも思ったが、俺だと逃げることも考えられる。

なので、顧問の大川先生に甘えることにした。

「それではお願いします。」

頭を下げてお願いすると………数学準備室に向かう。

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