冷たい指切り  ~窓越しの思い~
コンコン。

車の窓を軽く叩いて、到着を知らせる。

先程とは違って、長めのパンツになっている。

そっかぁ、俺と二人でハーフパンツはないよな。

正しい選択に、一人納得する。

助手席を促して、シートベルトを確認してから出発する。

前回の海に行くことにした。

………………………………。

……………………………………。

長い沈黙。

話しをしようと連れ出したものの、いざとなると………言葉が出ない。

いきなり「ごめん」もおかしいし。

「………………風邪は大丈夫?」

前回と同じく………体調の話しって……………。

これが国語教師の樹だと………もう少し言葉数も多いんだろうけど………

数学教師には、上手い言葉は浮かんでこない。

「あっ、風邪は……………」

言いよどむ彼女に、仮病だったことを確信する。

「やっぱりそうかぁ~! 『仮病』だと思った。
大川先生にチクるよ。」

「えっ!それは…………。
でも、あれは先生が………。
仮病だった訳じゃないですよ………。本当に心が痛くなったんだもん。」

「えっ!もしかして………俺のせい?ごめんね。」

素直に謝る俺に面食らい

「あっ!別に、先生のせいでは。
冷たくされたのは………ショックだったけど………。」

「えっ??俺!………冷たくしてないよ?!………多少、怒ったけど。
だって、誰かさんが駄々をこねるから~
いくらガキだって思ってても腹が立って。」

「ええっ!!私のせいですか??
だってあれは、先生がお姉ちゃんに挨拶するっていうから………
絶対!大事になるのに………。
先生にこれ以上迷惑かけたくなくて……………。
なのに、酷いです!」

「俺だって、君が一番いいように考えて………樹の部屋を使うようにしたのに
『使わない』なんていうから……カチン!ときて。」

「だから、それは先生が!!」

「そもそも君が!!…………」

だんだんデッドヒートしていく二人。

「………………ちょっと1回落ち着こう。」

この間の二の舞をしそうな雰囲気だったから………

車を止めて、カルピスとコーヒーを買いにコンビニに寄る。
< 57 / 81 >

この作品をシェア

pagetop