冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「先生、お疲れ様です。顔に出てますよ!」と

俺の表情を読み取って、からかってくる。

彼女には、俺がウンザリしていることが分かるのか??

驚いて、マジマジと顔を見つめると……

「恥ずかしいから、あまり見ないで下さい。
それより、頼まれたノート……集めて来ました。
女の子に頼む仕事じゃないですよ!腕がパンパンになっちゃいました。
テストが終わったら、何かご褒美下さいね。」と屈託のない笑顔を見せる。

この間の泣きそうな表情が、ウソのように。

「あっ……あぁ。………分かった。うん、ご褒美……ですね……」

彼女の心の中が気になっていたら

「なぁ~に、先生。
もしかして、私に見とれてた?」とからかわれた。

「なぁ~に、和く~ん。
もしかして、ちぃちゃんに見とれてたのぉ?」と………

伊藤のセリフをまねる樹にイラつきながら

「アホ!そんなことあるか!」と…どちらにでもとれる文句を言った。

「あはっ!先生でもアホとかって言うんだぁ!」

生徒には……女の子ということもあり

ふだん、こんな言葉づかいをすることはない。

たぶん、彼女だからだろうなぁ~と思う。

「木村先生って、先生のこと……和くんって呼ぶんですね。」

「そう!和くん、樹ってね!!
ちぃちゃんは特別だからね!他の人に教えちゃ、ダメだよ。」

樹の気持ち悪い会話に

「でも、木村先生。
この間三年のお姉さま方にも『君にだけ!内緒だよ』って
言われてましたよ。」

伊藤の反撃にも

「そう!僕は目の前の女の子が、いつも特別なの!」と……

教師らしからぬ発言をする。

「だったら、私はやっぱり………先生が良い!
浮気する人って、大っ嫌い!!」

妙に力の入ったセリフに度肝を抜かれた。

大っ嫌い!と言われた樹は……………目がテン。

二人のあまりの驚きように、我に返ったのか

「樹先生、女の子に嫌われないように頑張って下さいね。
女の子って、浮気にウルサイですよ。」といつもの彼女に戻った。
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