先輩の彼女
「ねぇ。灯。」

少し真剣な眼差しで先輩は話し始めた

「ありがとね。」

「…え?」

思いも寄らない言葉にあたしは驚きを隠せなかった

「隆斗でしょ?」

クスッと先輩は笑った

「先輩…」

先輩は気付いてたんだね
遊園地の理由
それから…
きっとこれからの事も…

「あたしもさ、そんなに大人じゃなかったんだよね」

寂しそうに俯いた

「そばに居たいんだよ…ホントは誰よりも近く…誰よりも長く…」

「先輩…」

初めてみる先輩の顔…
切ない恋する女の子の顔…

「我が儘だよね。…でもさ…顔見るだけでも、声聞くだけでも良かったんだよ…それすらも出来ない毎日はもう嫌…」

泣きそうな先輩を見てのどの奥が熱く、そして苦しくなった

「先輩。我が儘じゃないですよ?でも言わないと伝わらないですよ?どんなに長い間一緒に居ても一つの人間じゃないから伝えないと分かり合えないと思うんです」

あたしは先輩の手をそっと包んだ
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