先輩の彼女
その後すぐに幸乃先輩と彼氏の優斗さんが来て映画館に向かった
「はい、ともちゃん」
先輩はチケットを差し出した
「あ。チケット代…」
あたしがお財布を出すと先輩は首を振った
「ダーメ。こんな時位先輩顔させてよ」
「でもいつも…」
「灯、良いからもらっときな」
お金を出そうとしているあたしの手を、幸乃先輩が止めた
「そうそう、隆斗は灯が可愛くて仕方がないんだから…」
幸乃先輩に続いて優斗さんも言う
「うん。だってともちゃん俺には甘えてくれないしさ」
冗談混じりに隆斗先輩が笑った
「先輩。ありがとうございます」
ここまで来たら素直に受け取った方が良いのかな?と思い、笑顔で受け取った
「もー。灯は可愛いなぁ」
ギュムっ
「わぁ!!」
優斗さんがあたしに抱きついた
一見社会人でカッコイイ大人に見える優斗さん…
でも中身はかなりスキンシップが激しい人だった
「兄貴っ!」
グイっと腕を引っ張られあたしは隆斗先輩の腕の中へ…
ドキッ
どんどん鼓動が高鳴って行くのが分かった
「ちぇ~っ。隆斗のケチんぼっ」
そう言うと優斗さんは幸乃先輩と先に中に入って行った
「あの…先輩…」
やっとの思いで口を開いた
「あぁ。ごめん。行こうか」
離れていく腕は少し寂しかったけど、あのままじゃ心臓がもたないよっ…
そして離れた腕はあたしの左手にそっと触れた
「えっ…」
何事も無いかように先輩はあたしの手を取り歩き出した
ドキッ
再びあたしの胸は高鳴った
でも、嬉しくて…
あたしはその手をぎゅっと握り返した