先輩の彼女
先輩と居られる最後の日まで、あたしは笑って過ごした

今を…この幸せを大切にしたいから…

先輩は最後までこれからの事を口にしなかった

言わなくても分かってるかのように…

でもね…

あたしは、言葉が欲しかったんだ

繋がっていられる言葉が欲しかったんだよ…

「じゃあ、ともちゃん、行ってくるね」

先輩が発つその日もあたしは見送りに行った

これが恋人として最後の日だから

「うん。いってらっしゃい」

彼女として見送った

「電話もメールもするよ。休みは帰ってくるから…」

優しい先輩

でも今は痛いだけ

あたしは静かに頷いた

「あ。先輩これ…」

別れを綴った手紙を差し出した

「手紙?」

不思議そうな顔で封筒を受け取った

「向こうに着いたら読んでください」

きっと最初で最後のラブレター…

「ありがとう」

大好きな笑顔を見た

でももうお別れ…

駅のホームでは搭乗のアナウンスが響きわたる

「じゃあ…着いたら連絡するよ」

「…うん…」

軽く手を挙げ背を向けて歩き始める先輩

先輩の後ろ姿に呟いた

「バイバイ…」

見えなくなるまで見送って静かに涙を流した

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