先輩の彼女
先輩を見送った足であたしは実家に帰った

久しぶりに帰る実家は暖かかった

うちは母子家庭であたしはパパの顔を知らない

寂しいなんて思わなかった

ママが沢山愛してくれたから…

ピーンポーン

ガチャッ

「ママ…」

ただいまより先にママに飛び付いた

言いたいことは沢山あった

でも…

那智兄の所でも、幸乃先輩の所でもなくここに来たのは理由があった

突然の娘の帰りにも驚かず、ママは優しい笑顔で迎え入れてくれた

きっと…

分かっていたんだろう…

何か大切な事があるって…

「で?どうしたの?」

あたしが落ち着いたのを見て、ママは話始めた

「うん…彼氏と別れたの…でね…あたし…」

上手く言葉が出てこない

そっとお腹に手を当てた

「ちゃんと調べたの?」

「え?」

驚いた

まだ何も話していないのに…

「何年、灯の母親やって来たと思ってるの?そんな思い詰めた顔でお腹擦ったら分かるわよ」

怒るわけでも驚くわけでもなく優しく微笑んでくれた

「ママ…」

検査薬は何度か試した

嫌な位正確だった生理がもう3ヶ月来ていない

「明日病院行こうか」

ママは何も聞かない

先輩の事も

別れた理由も…

あたしはただ頷いた

涙を沢山流しながら何度も何度も頷いた

< 76 / 99 >

この作品をシェア

pagetop