夢の世界で会いましょう

2噂の彼に会えるのか

｢ようこそ！どんなお仲間をお求めで？まずは交流を深めてね｣

仲間を真剣に探す者、情報収集する者、ただバカ騒ぎがしたい者

飲食可能なこの集会所は多くの人で賑わっていた。

優奈は勇気を振り絞り、集会所の中に入っていく。


実は優奈の服装はその日によって異なる。
制服、活動着、おしゃれなドレス…様々だ。
普段着ない服装も出来るので、楽しいときもある。
ただし自分で選べないのが難点だ。

そんな優奈の本日の服装は

この場所にピッタリの旅人の服である。
腰に着けられた小さめの装飾ナイフがある意味チャームポイントだ。

(正しく、the初心者って格好だけど…変な服よりましよ。ここでセーラー服とか来てたら流石に入れないし)

普段からよくプレイするRPGの世界を思い出しながら、優奈は何とか気丈に振る舞う。
こういう時どうすればいいか、はゲームの流れを思えば、何となく掴めている分、幾分かのゆとりがあった。

｢よぉ姉ちゃん！あんたもこっち来て酒飲めよ！｣

｢こっちで親睦深めようぜ！ゲハゲハ！！｣

酒も飲めるため、出来上がった酔っ払いもそこそこいる。
優奈は作り笑いで誤魔化しながら、酔っ払い達から離れ、集会所の奥へと向かった。

奥にはカウンターと厨房がある造りとなっており、優奈はとりあえず、カウンターの椅子に座る事にした。

｢お嬢ちゃん、新人さんかな？旅に出るならもっとしっかり準備した方がいいよ｣

髪をオールバックで固めたバーテンダーは、優奈に優しく微笑み、声をかける。

｢お嬢ちゃんは一体どんなお仲間を探しにきたのかな？もし迷うのであれば、こちらから数名リストアップしようか｣

バーテンダーは優奈にホットココアを差し出した。

ふわりと香る甘い香りが、緊張しきった優奈の心を解していく。
優奈はお礼を告げた後、ホットココアを口に入れてみた。

温かくて甘い、優しい味だった。

｢あの…私…｣

優奈は一呼吸置きながら、言葉を繋いでいく。

｢ゆ…勇者様に…会いたいんです…｣

優奈の声はどちらかと言えば、小さい方だった。
それでも周りの人間が優奈の言葉に反応し、静寂が訪れた。

突然の沈黙に優奈は混乱した。

何かいけない事を言ってしまったのか

不安に駆られ、思わず周りを見渡してしまった。

しばらくすると、周りの人間が笑い出した。

大声で騒ぐ者、口を抑えて誤魔化す者、必死に堪えている者

何故そこまで笑うのか、優奈には理解が出来なかった。

｢あははっ！嬢ちゃん！あんたみたいなルーキーの卵が勇者何かに会える訳ねぇって！｣

｢ベテランの私達でも会えないのに…貴方が会うなんて…夢のまた夢ね｣

｢追っかけか？なら旅なんか辞めて、家でテレビでも見とけや｣

優奈は何も言えず、顔を床に向ける事しか出来なかった。

勇者に会いたい

それだけで何故こんなに笑われ、誹謗中傷されなければならならいのだろうか。