夢の世界で会いましょう
「お嬢ちゃん、勇者とはとても気高く、全世界の旅人が憧れる存在です。勇者の称号を与えられた者は世界中でもほんの少しだけ…。そんなに簡単に会えるものではないのです」
バーテンダーはポーカーフェイスを貫き、優奈に悟らすように、優しくゆっくり語りかける。
「今日は勇者様がこの街に来て下さる大切な日…。こんな所で待つよりも、パレードでお姿を見た方がよいかも知れません」
「……つ」
優奈は恥ずかしさと悔しさで顔を上げる事が出来なかった。
(ここは夢の世界なのに、何でこんな…惨めな想いをしないといけないのよ…)
溢れそうになる涙を必死に堪え、誤魔化すようにココアを飲んだ。
飲んでいる間もくすくすと笑う声が聞こえる。
どちらかと言うと内気である優奈にとっては苦痛しか無かった。
(もうこんな夢絶対見たくないっ!!最悪っ…)
負の感情が頭を駆け巡り、自己嫌悪に陥っていたその時だった。
集会所の扉がゆっくりと開く音が響いた。
そして再び、集会所に沈黙が訪れた。
優奈はその異質な雰囲気を肌で感じとった。
けれど、零れ始めた涙を見せたくなくて、下ばかり向いていた。
コツ…コツ…コツ…
革靴なのだろうか、硬い靴底の音がやけに響く。
堂々と歩くその足音は室内中央にあるカウンターへと進んでいるようだ。
その足音は優奈の少し後ろで止まった。
バーテンダーに話しかける訳でもなくて、何故かその足音の主は、優奈の後ろで止まったままだった。
流石に不思議に思ったのか、優奈は涙で濡れた瞳でゆっくりと振り返る。
「……こんな所に居たんだね…探したよ、優奈」
優しく語りかけたその人物は男性で、太陽のように暖かい金色の髪、空のように澄んだ蒼い瞳を有し、とても美しかった。
美しい輝きを放つ銀色の鎧のせいか、男性の優雅さを引き立てている。
優奈は思わず息を飲み、その男性に魅入ってしまった。
「…な、何故こんな所に…ゆ、勇者様が…」
誰かの呟く声がやけに耳に響いた。
その声がきっかけとなり、他の者達も騒めき始めた。
「……あの…時の魔神を倒したという…勇者…ライナ様だ」
「何故彼がこんな所に…?」
群衆の騒めきなど全く気にしない様子で、ライナはただ真っ直ぐ優奈だけを見つめ、優しく微笑んでいる。
「彼女は俺の仲間だ。うっかり無くし草を食べてしまい、記憶を飛ばしてしまってね…。あまり虐めないでくれ」
ライナは周りに語るように静かに告げた。
その言葉に群衆は言葉を詰まらし、室内に再び沈黙が訪れる。
「さあ優奈、行こう。君の探し人は見つかったのだから」
ライナは優奈の手を掴み、そのまま外へと連れ出した。
優奈は状況が整理出来ないまま、ライナに着いていくことしか出来なかった。
バーテンダーはポーカーフェイスを貫き、優奈に悟らすように、優しくゆっくり語りかける。
「今日は勇者様がこの街に来て下さる大切な日…。こんな所で待つよりも、パレードでお姿を見た方がよいかも知れません」
「……つ」
優奈は恥ずかしさと悔しさで顔を上げる事が出来なかった。
(ここは夢の世界なのに、何でこんな…惨めな想いをしないといけないのよ…)
溢れそうになる涙を必死に堪え、誤魔化すようにココアを飲んだ。
飲んでいる間もくすくすと笑う声が聞こえる。
どちらかと言うと内気である優奈にとっては苦痛しか無かった。
(もうこんな夢絶対見たくないっ!!最悪っ…)
負の感情が頭を駆け巡り、自己嫌悪に陥っていたその時だった。
集会所の扉がゆっくりと開く音が響いた。
そして再び、集会所に沈黙が訪れた。
優奈はその異質な雰囲気を肌で感じとった。
けれど、零れ始めた涙を見せたくなくて、下ばかり向いていた。
コツ…コツ…コツ…
革靴なのだろうか、硬い靴底の音がやけに響く。
堂々と歩くその足音は室内中央にあるカウンターへと進んでいるようだ。
その足音は優奈の少し後ろで止まった。
バーテンダーに話しかける訳でもなくて、何故かその足音の主は、優奈の後ろで止まったままだった。
流石に不思議に思ったのか、優奈は涙で濡れた瞳でゆっくりと振り返る。
「……こんな所に居たんだね…探したよ、優奈」
優しく語りかけたその人物は男性で、太陽のように暖かい金色の髪、空のように澄んだ蒼い瞳を有し、とても美しかった。
美しい輝きを放つ銀色の鎧のせいか、男性の優雅さを引き立てている。
優奈は思わず息を飲み、その男性に魅入ってしまった。
「…な、何故こんな所に…ゆ、勇者様が…」
誰かの呟く声がやけに耳に響いた。
その声がきっかけとなり、他の者達も騒めき始めた。
「……あの…時の魔神を倒したという…勇者…ライナ様だ」
「何故彼がこんな所に…?」
群衆の騒めきなど全く気にしない様子で、ライナはただ真っ直ぐ優奈だけを見つめ、優しく微笑んでいる。
「彼女は俺の仲間だ。うっかり無くし草を食べてしまい、記憶を飛ばしてしまってね…。あまり虐めないでくれ」
ライナは周りに語るように静かに告げた。
その言葉に群衆は言葉を詰まらし、室内に再び沈黙が訪れる。
「さあ優奈、行こう。君の探し人は見つかったのだから」
ライナは優奈の手を掴み、そのまま外へと連れ出した。
優奈は状況が整理出来ないまま、ライナに着いていくことしか出来なかった。