愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
エマさんが現れたことによって、ごまかせないほどの切なさが押し寄せて、自分の気持ちに向き合わざるを得なかった。


妹は嫌……。

そう思うのは、私が桐島さんに恋しているからなんだ……。


自覚したところで失恋は決定的で、涙腺が緩みそうになる。

けれども桐島さんを困らせたくはないので、唇を噛みしめて涙を堪え、俯いていた。


黄色い明かりの灯る暖かそうな玄関にいる彼と、冷たい夜の中に佇む私。

なかなか玄関の敷居を跨げずにいたら、中から優しい声で呼ばれた。


「有紀ちゃん、おいで。大丈夫。エマは帰ったよ」

「え……?」

「タクシーを呼んで宿泊先のホテルに帰した。気を使わせて悪かったね。だが、君はなにかを勘違いしています」


勘違いとは、どういうことなのか。

ある期待を抱いて足を前に進め、玄関に入ったら、桐島さんが引き戸を閉めた。

平べったい小石をタイルのように並べて固めた古めかしい玄関の床は、いくら掃除をしても黒ずみが取れない。

その上で私と向かい合って立つ彼は、ほんの少し微笑んで続きを話した。


「エマが私の恋人だと思ったのかもしれないが、それは間違いだ。彼女はいとこだよ」

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