愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
きっぱりとそう言い切った彼の言葉を、驚きから回復した思考力で私は考える。


桐島さんにとっての妹はエマさんで、私じゃないんだ……。


この胸を縛りつけていた紐が解けたかのように、痛みも苦しさもスッと消えていく。

それと同時に堪えていた涙が溢れ出した。

「よかった……」と震える声で呟いて、両手で顔を覆えば、大きな手が私の頭にのせられて、よしよしと撫でられる。

そして、一拍おいてから、「なぜ、よかったと思うの?」と穏やかな声で問いかけられた。


「それは……」

私が桐島さんに恋をしているからだと、言うわけにいかない。

言えばきっと、優しい彼を困らせてしまうから。

その考えがストッパーのように働いて、私は口ごもる。

鼓動が速く大きく波打つのを感じたら、桐島さんが持っていた私のショルダーバッグを玄関の上り口に置いたような音がした。

両手で顔を覆っているから、動揺している顔を見られずに済むと思ったのに、彼に手首を掴まれて外されてしまった。

涙に滲む視界に、真面目な顔をした彼が映る。

「言えない?」と問いかける声は、なぜか緊張しているような雰囲気があり、頷いた私に彼は黙り込む。

お互いに無言の時が数秒続き、やがて桐島さんが大きく息を吸い込んで、思い切ったように口を開いた。

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