愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「有紀ちゃんは、私を好きだから……それが理由では?」


言い当てられて、私は肩をビクつかせた。

どうしよう……と目を泳がせれば、私の頬を両手で挟むように触れて、彼が顔を近づける。

まるで、自分以外のものを見るなと言うように。


わずか拳ふたつ分ほどの距離に端正な顔があり、驚きに目を丸くしたら、彼が誠実な声色で、私の心に刻み込もうとするように、ゆっくりと語りかけた。


「もし、君の思いが恋とは違うなら、おかしな質問をして申し訳ない。だが、期待を抱いてしまった今は、聞かずにいられないんだ。なぜなら、私は有紀ちゃんを愛しているからです」


その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になってしまった。

泣くのも呼吸するのも忘れるほどに、なにも考えられず、衝撃の中に心を置いているだけである。


桐島さんは今、なんて言ったの……?


呆然としていたのは、きっと十秒ほど。

「え……?」と振り絞るような声で問い返せば、彼は私から手を離し、困ったように人差し指で自分の頬を掻いた。


「有紀ちゃんと交際したいと願っているんだけど……そんなに信じられない?」

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