愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
いい機会だから、家の中だけは砕けた話し方をして、自分のことを“私”ではなく、“俺”と呼んでみたいと交際開始後まもなくして言われ、私は密かに喜んだ。

距離が縮まった気がして嬉しくなり、彼が“俺”と言うたび、新鮮さにドキドキとときめく。

私に対してだけの言葉遣い、というのも、胸が高鳴るポイントである。


「桐島さん、おはようございます……」


対して私はなにも変わっていないのだが、こうして抱きしめられることには慣れたように思う。

鼓動はせわしなく鳴り立て、照れくさいけれど、焦って逃げ出したくなるほどではない。

彼は恋愛初心者の私に合わせ、スキンシップを少しずつ濃いものに変えてくれるから、ここまでの触れ合いを自然に受け入れられるようになったところである。

とはいっても、キスは未経験で、もちろん寝室も別の部屋。

彼には申し訳ないが、私の場合、それらを受け入れるには、もう少し心の準備期間が必要みたい。


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