愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
そう思いつつ、跳ねた鼓動がゆっくりと速度を落とすのを感じていたのに、今朝はこれで離してくれず、彼の腕の中でくるりと体を反転させられた。

今度は正面から抱きしめられて、私の髪に彼の鼻先が埋められる。

彼の着ている浴衣の前合わせが緩いから、意図せずに私の唇が彼の鎖骨付近に触れてしまった。

浴衣越しの逞しい筋肉の質感も伝わってきて、私の顔はたちまち熱くなる。


桐島さんは左腕で私をしっかりと抱きながら、右手をゆっくりと上下させて私の背中をなまめかしく撫でる。

思わず「あっ……」と甘い声をあげたら、恥ずかしくて心の中は大忙しだ。

「どんな感じ?」と色気を含んだ声で囁かれて、返事に詰まる。

「心臓が壊れそうです……」と振り絞るように答えれば、「それは困るな」と真面目な声で言われ、彼は私を放してくれた。


なかなか抱擁の先に進めないことを、「ごめんなさい……」とモジモジしながら私は謝る。

すると、「これについて謝るのはナシだと約束したよね?」とたしなめられた。

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