愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
それから私の頭を撫でてくれて、「有紀子のウブなところも含めて愛してる。なにも問題はない」と灰青色の瞳が優しく細められた。


どうしよう。

照れくさくて、どんな顔をしていいのかわからないよ……。


逸らした視線を仏壇のある居間へ向ける。

朝から桐島さんの愛情に浸って夢心地になりながら、『こんなに幸せでいいの?』と心の中で祖母に問いかけていた。


それから数時間が過ぎて、時刻は十二時になろうかというところである。

今年の冬に発売の新商品に関する企画会議が一時間ほどあり、それを終えた私は、皆が退室した後の会議室を片付けていた。

ここは三階の営業部の向かいにある、小会議室。

ホワイトボードを消し終えた私が最後に廊下に出たら、斜め向かいの営業部のドアからちょうど桐島さんが姿を現した。


桐島さんの方は私に気づいていない様子。

声をかけようとしたが、その前に、彼を追うようにして営業部から出てきた女性社員が「社長」と呼び止めた。

「申し訳ございません。もうひとつ、確認したい点が……」と彼女がなにかのファイルを開いて話し始めたので、私は小会議室のドア前で足を止めたまま、口を閉ざす。

立ち去れないのは、桐島さんに見惚れているせいである。

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