愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
彼を斜め後ろから見つめる私は、見慣れているはずのスーツ姿に、うっとりとため息を漏らしていた。


それは私だけではなく、他の社員も同じこと。

廊下を行き交う数人の男女も、桐島さんに羨望の眼差しを向けているように見える。

足を止めている私の前を、他部署の女性社員がヒソヒソと話しながら通り過ぎる。


「眼福だよね」

「うん。テレビにイケメン俳優が出ていても、うちの社長の方がかっこいいと思っちゃう。きっと社長の彼女は女優並みの美女なんだろうね」


彼女たちの後ろ姿に視線を向けた私は、苦笑いして心の中で呟く。

ごめんなさい。社長の恋人は美女じゃなくて、私なんです……。


私たちの交際については、隠しているわけではないが、進んで報告することでもないので、社内で知っている人はいない。

桐島さんと私が同居していることも、総務の笹木さんしか知らないのではないだろうか。

笹木さんには入社したてのオリエンテーションの時にお世話になり、同居について話した覚えがある。

今でもきっと、私たちが、ただの大家と下宿人の関係にあると思っているはずだ。


< 150 / 258 >

この作品をシェア

pagetop