愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
恋人だという噂が広まって冷やかされでもしたら、どうしていいのかわからないし、このまま誰も知らないままでいいと私は思っていた。

けれども今、社長の恋人についての憶測を話していた彼女たちを呼び止め、『私が恋人なんです』と主張したくなった。

もちろんそれを実行する勇気はないけれど、『私の彼は素敵でしょ?』と自慢したくもなり、心には優越感に似た思いが込み上げる。


そんな心の変化にハッと気づいたら、慌てて首を横に振り、自分を戒める。

桐島さんが素敵なのは、彼の素質や功によるものであって、私はなにひとつ影響を及ぼしていない。

それなのに自慢したくなるなんて、浅ましいことだ。

私、性格悪くなっちゃったのかな……。


営業部の女性と話し込んでいる桐島さんに、廊下の前方からもうひとり、女性社員が近づいてきて声をかける。

この後のスケジュールがどうのと話す彼女は、社長付きの秘書の水上(みなかみ)さんだ。

営業部の女性社員も水上さんも、たしか三十二、三歳だったように思う。

ふたりとも落ち着いた大人の女性といった雰囲気で、ブランドもののお洒落なオフィススーツを素敵に着こなしていた。


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