愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
今日は三十分残業して、十八時半に退社した私は帰路に着く。
電車を降りて駅を出ても、まだ空は明るさを残し、薄紫と橙の二色に染められた雲が空に層をなしていた。
今は晴れているが、梅雨入りした東京の街にはそこかしこに雨の香りが漂っている。
足元の水溜りを避けて歩きつつ、頭の中で夕食の献立を考えていた私であったが、ふと目にしたファッションビルのショーウィンドウ前で足を止めた。
素敵な服……。
ショーウィンドウに飾られているのは、紺地に波打つ青いラインが大胆に入れられた、マキシ丈のオフショルダーワンピースである。
デザイン性だけでなく、襟ぐりが広くて露出度が少々高めである。
目を奪われている理由は、これを着たら私でも大人っぽく見えて、桐島さんに似合う女性になれるのではないかと思ったためだ。
けれども、期待はすぐに泡となり消えてしまう。
ワンピースの横にディスプレイされているハンドバッグのロゴは、世界的に有名な高級ファッションブランドのものである。
この店で私が買える服は一着もないと判断し、夢破れた心持ちでいた。