愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「うん、綺麗に書けた。楽しかった」と独り言を呟いて絵筆を置いたら、「有紀ちゃん」と後ろに声がした。

振り向くと、居間の戸口に立っているのは桐島さん。

彼は半袖ワイシャツにネクタイを締め、小脇に脱いだスーツのジャケットを抱えて仕事用の鞄を提げている。

日曜日でも彼は時々仕事に出かけ、今日もそうなのだろう。

今は帰ってきたところのようで、額にうっすら汗を滲ませていた。


縁側まで歩み寄った彼は、私の横で中腰になり、スケッチブックを覗き込む。

「とても上手だ」と灰青色の瞳を細めて褒めてくれた。


「あ、ありがとうございます……」


祖母や弟以外の他人に、絵を見られるのは少し恥ずかしい。

素人が自己満足のために描く絵なのだから、見てもらいたいと思えるほどの自信はなかった。

思わずスケッチブックを閉じてしまったら、桐島さんが目を瞬かせた。


「なぜ隠すの? 見せてください」

「あの、自己流で描いてるので、お見せできるほどの絵じゃなくて……」

「そんなことはない。写実的なのに可愛らしい味わいがあって、色使いがとても綺麗だ。有紀ちゃんの絵に私は今、癒されました。もう少しゆっくり眺めれば、今日の仕事の疲れがすっかり取れると思います」
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