愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
過去に描いた絵は、今のものより下手くそでさらに自信がないので、それは勘弁してほしい。

けれども桐島さんは、「そう」と深く頷いただけで、水彩画の話を終わらせてくれた。


彼は優しい人である。

きっと恥ずかしがる私の気持ちを汲み取って、話を広げないようにしてくれたに違いない。


代わりの話題として彼が座卓の上にのせたのは、ティッシュの箱ほどの大きさで、藍色に金縁の立派な紙箱に入れられたチョコレートである。

「有紀ちゃんにお土産だよ」と彼は微笑んだ。


「モルディのチョコレートだ。いつもありがとうございます!」


モルディは世界的に有名なヨーロッパのチョコレート会社で、スーパーマーケットやコンビニでは売られていない。

手に入れるにはデパートの専門店で購入するか、モルディのオンラインショップで取り寄せるしかなく、高級品である。

味はもちろんのこと、見た目が華やかで美しいので、贈り物として購入する人がほとんどなのではないかと思われた。


貧乏人の私が自分で買うことは決してない、この高級チョコレートを、桐島さんは時々、差し入れてくれる。
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