愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
申し訳ないと思いつつも、絶品チョコの味を思い出せば心が弾み、食欲が刺激される。

ゴクリと喉を鳴らした私が、「今、食べてもいいですか?」と尋ねれば、「もちろん」と彼は片目を瞑って答えた。


モルディと英語で書かれた箱の蓋をそっと開ければ……私は感嘆の息をつく。

芸術的なまでに美しい、ひと口サイズのチョコレート十個が、二列に並んでいた。

“チョコレートの宝石”と、呼ばれている通りの見た目である。


箱に伸ばした手を彷徨わせて、私はどれから食べようかと迷っていた。

ひとつひとつ味も形も異なるので、いつも口に入れるまで時間がかかってしまう。


二十秒ほどかけてやっとつまんだのは、表面に波模様をつけた一番シンプルに見えるひと粒だ。

口に入れて歯で割ると、中からオレンジ風味のトロリとしたチョコレートが溢れ出て、その美味しさに私の心までとろけてしまいそうになる。


ああ、幸せ……。


飲み込んでしまうと、またすぐに次の幸せが欲しくなり、ホワイトチョコでコーティングされたものを口に入れた。

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