愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
下宿人の勤め先や通学先などの情報は、部屋を貸す際の契約書に記入されているはずで、祖母は知っていると思う。

けれども私はそれを見たことがないし、経営の重要な部分に関与していない。

それは祖母が健康不安もなく元気であることと、祖母にとって私はまだまだ子供であるということが理由のように思われた。


会話の端々で、大学生三人が通う大学名は知っているけど、桐島さんの勤め先は聞いたことがない。

彼の仕事に関して私が知っていることは、電車通勤できる範囲にあるどこかの会社に勤めていて、基本は週休二日の一日八時間勤務ということくらいだ。

私が気にかけるのは夕食のことで、いつでも家にいる横谷さん以外の下宿人たちには、帰宅時間に変更があれば、メールか電話で知らせてもらっている。

それだけの情報で、充分であった。


これまで四年間、一度も尋ねなかった仕事内容について質問した私に、彼は戸惑うような顔をした。

けれどもそれは一瞬だけで、すぐに口元に笑みを浮かべて教えてくれる。
< 22 / 258 >

この作品をシェア

pagetop