愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「演奏家!?」と驚く私に彼は、もっと詳しく教えてくれる。

日本人の父親はバイオリニストで、ベルギー人の母親はピアニスト。

クラシックに疎い私はその名を耳にしたことがないけれど、ふたりとも有名な奏者で、コンサートやリサイタルは、世界各地で行われ、多忙な生活を送っているそうだ。

そのため家族三人揃って、ベルギーにある自宅で過ごす時間は、彼が幼い頃からなかなか取れないという話であった。


桐島さんは自嘲気味に、「音楽的な才能は遺伝されなかったらしい」と話を続ける。


「私はピアノを少し弾ける程度で、クラシックに興味も薄いんです。音楽より今の仕事が性に合う。好きな世界で生きている両親なので、私にも自由に生きなさいと言ってくれました」


息子を無理やり自分たちと同じ世界に入れようとするのではなく、自由に……か。

心の広いご両親だと尊敬の念が湧く。

そして自由な気持ちで、日本で働くことを選んでくれた桐島さんに、これまで以上の好意と親近感を抱いていた。


「素敵ですね」と、桐島さんと彼のご両親について感想を述べたら、玄関の引き戸が開けられる音がして、「ただいま」と祖母の声が聞こえた。


「あ、おばあちゃん、お帰りなさい!」

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