愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
慌ててモルディチョコレートに蓋をして、座卓の下に置いた。

隠さなくてもいいのに、そうしたわけは、祖母が私のことを和菓子好きだと思っているからである。


私が菓子を買うとしたら、祖母が好きな小豆餡の入った饅頭や大福餅がほとんどだ。

本当はチョコレートが一番好きだけど、それを話したら、祖母はチョコレート菓子を買ってきなさいと言うに違いない。

私としては、自分の好物より、祖母が美味しそうに饅頭を食べる顔が見たいのだ。

チョコレートほどではないけれど、私は和菓子も好きなので、決して無理をしているわけでもない。


ハンカチで汗を拭きながら居間に入ってきた祖母は、干し椎茸の他に、水羊羹の入ったビニール袋を提げている。


「おや、桐島さんもいたのかい。ちょうどよかった。乾物屋のさっちゃんに、お中元のお裾分けを三つもらってね。有紀子は小豆の和菓子が好きだから。一緒に食べよう」


ハッとして桐島さんの顔を見たのは、私がモルディチョコレートを幸せいっぱいに頬張ったばかりだと、言われてしまう気がしたためだ。


目が合うと彼は、瞳を三日月形に細めて、小さく頷いてくれた。

『大丈夫。事情はわかったよ』と言いたげに。

いや、もしかすると今わかったのではなく、前々から私が和菓子好きを装っていることに気づいていたのかもしれない。
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