愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
これまで彼が私にモルディチョコレートを差し入れてくれたことは十回以上あったが、思い返せば、初めての時以外、祖母が近くにいない時を狙って渡してくれた気がする。

桐島さんは私のことをよく見て、気持ちまで理解してくれているんだ……。

そう思うと少しくすぐったいような、照れくさいような喜びが、胸にじんわりと広がっていった。


和気あいあいと水羊羹を三人で食べ終えると、時刻は十三時四十五分。

そろそろ私は、アルバイトに出かけなければならない。


立ち上がった私に桐島さんは、「行ってらっしゃい。頑張って」と優しい声をかけてくれて、彼自身は動く気配がない。

このまま祖母の世間話に付き合ってくれるのだろうと思ったが、祖母が腰を上げた。


「さて、もういっぺん、行ってくるかな」


私は廊下に踏み出そうとしていた足を戻して振り向き、「おばあちゃん、どこ行くの?」と問う。


「乾物屋。水羊羹をもらったからね。お返しに、うちの紫陽花を切って持っていくよ。さっちゃんは青紫色の紫陽花が好きなんだ。きっと喜んでくれる」

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