愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「有紀子、鈴木くんの茶碗が空になったよ。お代わり、よそってきてやんなさい」


鈴木さんは大学四年生で、私と同じ二十二歳。

まだ食べ盛りと言える年齢ではあると思うけれど、一膳目を小どんぶりほどの大きな茶碗で出しているし、さすがに多いのでは……。

鈴木さんを見れば、祖母の先走った好意に「えっ」と戸惑いの声を漏らしていた。

しかし、長袖の割烹着姿で汗をかきながら、人のよさそうな笑顔を浮かべた祖母に、「たくさん食べて元気に勉強しなさいよ」と言われては、断りにくそうだ。


彼は「それじゃ、半分だけお願いします」と苦笑いして、私に大きな茶碗を差し出した。

私もクスクスと笑って、「少なめによそいますね」と立ち上がり、開け放してある開き戸から廊下へ出る。


床板の軋む廊下は、玄関まで一直線に延びている。

その左側は六畳間が三つ並んでいて、祖母と私がひと部屋ずつ、寝室として使っている。

玄関寄りのもうひと部屋は横谷さんの部屋で、右側には共同の浴室と洗濯乾燥機、トイレと台所、それと階段があった。
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